悪魔の証明
突然ですが、あなたは人のお金を盗んだことがありますか? 万引をしたことは?
おそらく殆どの人は「ない」と答えるでしょう。
ではそれを証明して下さい。
きっとそう言われると困ってしまうことでしょう。ええ、完全に証明することなどまず不可能ですからね。
この様な“無いことの証明”や“していないことの証明”の事を一般に、“消極的証明”と言ったり“悪魔の証明”と言ったりするようです。
元々これらは法学の世界から生まれた概念と言葉のようですね。
因みに理科系の世界では、“悪魔の証明”などという言葉はまず使われませんし、私も聞いたことがありません。
理由は簡単です。理系の世界ではそんなものは証明が出来ない事が当たり前なため、誰も「証明しろ」などと言わないからです。
つまりそんな証明をしろと言う方がバカ扱いをされるレベルのものなのです。
例えば理系の世界にも宇宙人が存在すると思っている人と、存在しないと思っている人が居ます。
宇宙人の存在を証明する方法は簡単です。例えば宇宙人を一人でも捕獲するなり、或いは電波などで遠く離れた生命と交信すれば宇宙人の存在を証明したと皆が認めることでしょう。
ですが宇宙人が存在しないことを証明できるでしょうか?
これはまず不可能です。
たとえ技術が進歩して、宇宙にある星を片っ端から調査できるようになり、どこにも宇宙人を発見できなくても宇宙人の不在を証明したことにはなりません。
なぜなら本当は宇宙人は存在しているけれど捜索が完璧ではなかったため、何らかの理由で発見できなかった可能性を残すからです。
例えば宇宙人はどこかに隠れているだとか、すごくミクロなサイズだからだとか、透明で見えないからとか、太陽の中心部やブラックホールの中に存在しているから見つけられなかった可能性がある、といった反論を否定することが出来ないからです。
つまり”悪魔の証明”は、“何をもって証明したことになるのか?”の定義が無いのですよ。
因みにこの都合の良い性質は、しばしば詐欺(サギ)師によって利用されていると思われます。
これは余談ですが、私がはじめて”悪魔の証明的”な論法を知ったのは、昔、戦時中の韓国人慰安婦の強制連行問題がマスコミで報じられたときでした。ええ、理系の世界には存在しない概念と言葉なので私はそれまで知りませんでした。
日本がいくら探しても強制連行の証拠が見つからないとなると、韓国が「では強制連行がなかったことを証明しろ」的なことを言って驚いた事を覚えています。
そして皆がその言葉を笑い飛ばすこと無く、真に受けていたマスコミ(に出ている人)に更に驚きました。
これは上記の「あなたは今までに人のお金を盗んだことが無いことを証明せよ。それが出来ないのなら、あなたは泥棒だ」と言う論法と全く同様です。
この手口は詐欺師だけでなく、情報操作やプロパガンダにも使われることがあるので、ぜひ覚えておいてください。ここでは政治的な話はしませんが、他にもたくさんこの手のものはありますよ。
そしてこれらは詐欺の手口なので、その手のことを言われたら秒で反論できるように本項を思い出してくださいね。
さて、余談はこの辺にしておきましょう。
話を宇宙人の有無の件に戻しますが、もしあなたが宇宙人の有無について真実を知りたいとしましょう。或いは宇宙人の有無について、誰かと賭けをするとしましょう。
あなたは宇宙人が居る方、居ない方のどちらに賭けるべきだと思いますか?
もう分かったと思いますが、当然、“宇宙人が居る方”に賭けるべきです。
なぜなら、そうすることであなたは絶対に賭けに負けないからです。勝てないかもしれませんが、負けることはありません。
つまり、
真実を知りたいと思った瞬間に、居る方に賭けるしか無い
のですよ。逆の証明はどうやっても出来ないのですから、この賭けは一択問題なのです。
つまり居る方に賭けて宇宙人を探すか、或いは“真実を知ることを諦めるか”のどちらかなのです。
これは信念やイデオロギーの問題ではなく、純粋な論理です。
不在の証明が出来ないことは、ある意味で人間の限界を表わしているのかもしれませんね。
さて、察しの良い方は既に私の言わんとしていることが分かったかもしれませんね。
最後に私から一つ問いかけます。
この賭けは、”パスカルの賭け”だと思いますか?
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