“メタ”という概念を考える


さて、そろそろ重要なテーマに入りましょう。
皆さんは“メタ”という言葉を知っていますか? これは古代ギリシャ語に期限を持つ英語です。
ネットで調べるとその意味について様々な解説が有ると思いますが、この言葉に対応する日本語でどうにもぴったり来るものが無いのですよ。
なので強いて言うことになりますが、“高次の”“別次元の”“外の世界の”“別世界の”といった表現が当てはまるでしょうか。
(因みに私から“メタ”の新しい日本語訳を一つ提案しておくと、それは“客観的な”です。これについてはまた何れ話しましょう)

実はこの”メタ”という言葉はコンピューターの世界では昔からよく使われています。例えば“メタファイル”“メタデータ”といったものたちですね。
まあこの言葉についてはあれこれその定義を説明するよりも、具体的な例を挙げた方が分かりやすいでしょう。

分かりやすい例として、漫画の世界には“メタ発言”と呼ばれるものがあります。これは漫画の登場人物が漫画の中で作者をいじったり、或いは読者に向けたメッセージを言ったりするものです。
例えば漫画の登場人物が作者に「ワンパターンなストーリーだ」や「絵が下手だ」などと突っ込みを入れるものがあります。
他には登場人物が「この話について詳しくはコミック〇〇巻に載っています」「残りのページ数が少ないから」などと読者に向けたメッセージを言うものもありますね。

つまり“メタ発言”とは漫画の中の世界では設定上おかしい、別世界のセリフを言うものです。漫画の中の世界観では登場人物が知り得ない実世界のことを知っていたりするわけですからね。漫画の登場人物は役を演じている訳ではない設定ですから……。
ちなみにこれと同様のことは映画やドラマでもやろうと思えは出来るでしょう。
例えば映画の中で登場人物が「この映画を一人で見ているそこのあなた、本当の恋愛をしていますか?」などと発言すればそれも”メタ発言”となりますね。

これらの”メタ発言”の例では、日本語で言う“高次の”や“別次元の”、といった言葉が比較的当てはまるでしょうか。

他の例ならば、デジタルカメラで撮った写真のメタデータと言うものは比較的よく聞くでしょう。具体的に言うと、写真の画像ファイルに含まれる写真を撮った日時やGPSで取得した場所、他にファイルサイズや、ファイルの解像度などの情報のことです。



図1 デジカメで撮った写真ファイルに含まれるメタデータの例

デジカメ(スマホのカメラなどを含め現在ではほぼ全て)で撮った写真というのは全てドット(点)のデータで出来ています。
つまり、全ての点の場所(座標)と色が記録されているのが写真のデータです。そして解像度のスペックで使われる“何万ピクセル”というのは文字通りその点(ピクセル=ドット)の数を指しています。

つまりカメラで撮った景色の光が点の情報として保存されているのがデジタル写真なのです。
しかしながら、その中の“撮影した場所”や“日時”、”カメラのモデル”などの情報は撮影した風景の光の情報とは別次元の情報ですよね?
なのでこれらはメタデータと呼ばれるわけです。メタデータは風景の光の情報とは関係ないもので、主に後にコンピューターで管理しやすくするために埋め込まれているわけですからね。


さて、これらの例で“メタ”の意味が大体わかってきたでしょうか?

この“メタ”のレベルでものを考えるということがとても重要で、本サイトのメインテーマでもあります。そしてこの“メタ”という考え方は実はとても大きな力を秘めているのですよ。

一つだけヒントとなる話をしておきましょう。
あなたが3DCGで描かれたFPSゲームをしている事を考えてみましょう。
FPSとは”ファーストパーソン・シューティングゲーム”の略で、一人称視点の3次元ゲームのことです。まあ、簡易VRゲームとも言えるものですかね。
仮にそのゲームの中で、あるプレイヤーが「あの黒い塊は鉄だ」と言ったとしましょう。でもあなたは、「いや、あの黒い塊は鉄ではなくて岩だ」と言い口論になったとしましょう。

そこで私がこう言ったらあなたはどう思いますか?
「いいえ、あの黒い塊は液晶ディスプレイのドットです」。或いは「あれはコンピューターの中のただのデータです」。

これはメタレベルの発言であり、黒い塊を鉄だと言ったプレイヤーも岩だと言ったプレイヤーも、両者とも同意せざるを得ない内容ですね。(それを言うべきかどうかは置いておいて(笑)、ですが)

ゲームではなく漫画の例も一つ。
仮に漫画の中で登場人物らが化石の年代測定をしていて、化石が出来た年代について意見が分かれたとしましょう。ですがメタレベルで考えれば化石が出来た実際の日付は、漫画が印刷された日です。もっと言えば、描かれている化石は実際には化石ではなくて紙とインクです。更に言えば、紙とインクは原子であり素粒子であり、更にもとを辿れば全て超弦です。
もちろん、漫画の登場人物と我々はレイヤーが異なるのでこの様な会話は出来ませんが。

これらの例で、何となく言わんとしていることはわかったと思います。
メタレベルの考え方は、別の言い方をすれば“上位概念”であり“上位互換”の考え方なのですよ。
そしてこの“メタ”という考え方は強力なパワーを持っているのです。

さて、少し概念が難しかったですか?
取り敢えず、今回はこの辺にしておきましょう。


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