誰も言わない専守防衛のデメリット


最近はニュース等で防衛費増大の話が良く取り上げられていますね。昔はGDP比で1%とされていたものを2%まで上げるだとか、色々な話が出ているようです。

この予算は当然ながら税金からまかなわれるので、あまり額が増えると国民は経済的に厳しくなりますね。
しかし衰えたとは言え日本の経済力は未だ世界でトップクラスです。その日本が国を守ろうとすると経済的に厳しいとなると、他の国は一体どうしているのでしょうか?
或いは日本よりも経済力のない殆どの国は、国を守れないのでしょうか?

今回はそんなことを考えてみるとしましょう。

言わずと知られていますが、日本の安全保障のスタンスは“専守防衛”ですね。
専守防衛について詳しくはネットに多く解説されていますので、そちらを見てくださいね。

日本の専守防衛のスタンスを一言で言うなら、自分から先に武力を行使することは論外として、敵国がミサイルなどを撃ち込んできてもそれを迎撃する、つまり打ち落とすことはしますが発射した国の領土に対して報復のミサイルを撃ち込むことはしない様です。
よって自衛隊は日本の領海を越えて攻撃することはないので、今までずっと空母も持っていませんでしたね。

最近ではよく敵基地攻撃能力がどうのと議論されていますが、現時点ではまだ敵国本土へのミサイル攻撃は行わないはずです。
(近いうちに変わるかも知れませんが)

この様に日本は「専守防衛に徹する」と良く言われていますね。

ではこのポリシーの是非の前に、専守防衛がどのようなデメリットをもたらすのかについて考察してみましょう。
戦争でも起こらない限り、このポリシーは我々一般人には関係ない話なのでしょうか?

世界に於いても専守防衛のポリシーを世界に向けて公に掲げている国は殆ど無いでしょう。
少なくとも私は一つも知りません。

ここで1つ思考実験をしてみましょう。
もし仮に北朝鮮が国防を専守防衛のポリシーに切り替えたらどうなると思いますか?
当然ながら専守防衛ならば核兵器も、ましてやそれを飛ばすためのミサイルも必要ありません。というより、持ってはいけません。
所持するのは入ってきたミサイルを打ち落とす迎撃ミサイルや、国内(領海を含む)に入ってきた敵から守るための通常戦力だけになるはずです。

もしも北朝鮮がこれらの手段だけでガチで国を守ろうとしたらきっと、

破産します。

「攻撃は最大の防御なり」という言葉があるように、攻撃というのは守るためにも最も有効な手段の一つなのです。

つまり国防に限ったことではなく、一般に攻めるよりも守る方がずっとお金が掛かるのですよ。
例えばある人が誰かを殺そうと思ったら、とても安価に実行出来るでしょう。それこそ包丁一本あれば、或いはバット一本あれば誰でも簡単に殺すことが出来ますよね。その気になればそこらに落ちている大きな石でも出来るでしょうし、力が無い人なら車で跳ね飛ばす方法もあるでしょう。

しかしながら殺人犯から誰かを守ろうとすると、とてもお金が掛かりますよね?
殺人犯はいつ、どこで、誰を、どんな手段で襲ってくるのか分からないのだから、ボディーガードが常にあらゆる事態を想定して対象となりうる全ての人に引っ付いていなければいけません。

たとえ殺人犯が昼寝をしている時だろうがボディーガードは休むことは出来ません。

またもし銃社会ならば、一発数百円の銃弾一発で簡単に人を殺すことが出来ますが、銃弾から人を守ろうと思ったら防弾仕様の車で移動し、外では防弾チョッキを着たりとえらく手間もお金も掛かります。
しかもそれでも完璧に守れるわけではありません。安部元総理のように国内トップレベルのボディーガードに囲まれていても、あっさりと殺されてしまうこともあるのです。

もうわかりましたね?
とにかく、ほぼ全てに於いて攻撃するよりも攻撃から守る方が遙かに不利であり、お金が掛かるのですよ。

以前にアメリカからバカ高いイージスアショアの様な迎撃ミサイルを買うという話がありましたが、政治家らは「それがないと国を守れない」的なことを言っていましたね。
もしもそれが本当ならば、世界中のほぼ全ての国はイージスアショア何て持っていない(そもそも高くて買えない)のだから国を守れない事になるでしょう。ですが実際にはそんなことはありませんよね?

ミサイル迎撃システムを持たなければ国を守れないのは、日本がミサイルを撃った敵の発射基地を攻撃せず、ひたすら来たミサイルを迎撃し続けるという専守防衛をポリシーとしているからに他なりません。

ですがこの専守防衛の代償として、我々は膨大なお金を、つまり税金を使わされているのですよ。
安全保障というといつも武力の話になりがちですが、経済面も考慮してこその安全保障であるはずです。
実際に旧ソ連が崩壊した原因の一つは、アメリカに対抗するための軍事力にお金を使いすぎて経済が破綻したからだと言われていますが、それもあながち嘘ではないでしょう。

実際に貧しい北朝鮮が核兵器とミサイルを開発しているのは純粋にそれが一番安いからに他なりません。つまり格好にこだわっていられない経済情勢の国として、必要に迫られてのことなのだと思われます。(善し悪しは別として)

つまり専守防衛はお金持ちの国しか行うことが出来ないブルジョア向けのポリシーなのです。
しかしながらこれからの日本には経済的な余裕はもうありません。

そこで専守防衛を維持しつつ経済も成り立たせる妥協案として、アメリカからミサイル迎撃システムを買うのではなく自国で開発するという方法もあります。そうなればお金が国内で回るので外国から買うよりは経済に優しいし、更に完成したミサイル迎撃システムを外国に売れば黒字になることさえあるでしょう。多分、日本が本気になれば性能の良いシステムが作れるはずですから、世界中に売ることも可能だと思われます。

しかしながら日本が作った兵器を他国に売るアイディアを出すと必ず「日本が死の商人をするのか!」と言って反対する人が出てきますね。
いや、飛んできたミサイルを打ち落とすだけのミサイル迎撃システムが何で死の商人になるのやら……。では打ち落とさず多くの人を死なせた方が死の商人にはならないのでしょうか?

とにかくこの手の話はいつも支離滅裂です。いつもこれらの論調を作っているのは日本を弱体化したい国や日本に武器を売って儲けたい国など、外国の工作なのか?と本気で疑いたくなるレベルですね。

まとめると専守防衛というポリシーは仮に武力的には守ることが出来たとしても、経済的には国が破綻に追い込まれる可能性があるということです。
軍事と経済は不可分なのが世界の常識であり、安全保障についてはイデオロギーだけでなく経済的な面も考慮する必要があるのです。
国家の経済的な破綻は武力攻撃を受けるのと同程度に危険なのですよ。


結論として、専守防衛というポリシーはお金がべらぼうに掛かる割に、得られるのは”ささやかな自己満足”だけではないでしょうか?

ですがいくら経済が厳しくなっても、日本はこのポリシーを変えることはないと私は思います。
とにかく、これからも我々は国防のために大量の額のお金を使っていくのでしょう。
そしてその多くは外国に流れるのです。


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