戦争経験者が語る「太平洋戦争は悲惨だった」は正しいのか?


少し科学寄りの記事が多いので、たまにはこんな話も書いてみましょう。
ここに書くことも、個人的なイデオロギーや思想は一切含みません
単純な事実と論理の組み合わせのみという、“科学者のスタンス”で思考してみましょう。

今の若い人たちはどうなのかは良く知りませんが、私は子供の頃から「戦争は悲惨だ」という話をあちこちで聞かされました。
学校でもそうだったし、例えば修学旅行でも広島で全校生徒が体育館に集められ、戦争経験者と言われるご老人らからその悲惨な体験談を皆で聞いたものです。
そして太平洋戦争の悲惨な話の多くは、空襲の話や原爆の話でした。

そしてその内容は東京大空襲を始めとした都市空襲から逃げ惑った話や、広島・長崎の原爆の話が多かったです。
空襲で動物園から猛獣たちが逃げて人に危害を与えるのを防ぐために、上野動物園で象が殺された話などはアニメや映画にもなりましたね。私も小学生時代に映画館で見ました。
私の祖母が母を妊娠中に空襲にあい、大きなお腹を抱えながら防空壕に逃げ込んだ話も聞いたことがあります。

この様に太平洋戦争中に空襲にあった人たちは皆、“戦争経験者”と言われていました。
そして戦争経験者が語る戦争は、とても悲惨だとされていました。

多くの話を聞いて、彼ら、彼女らが語る経験が悲惨であることについては、全くもってそのとおりだと私も感じました。
いえ、それどころか悲惨という形容詞よりももっと上の言葉がないかと思うほど、それはそれは悲惨なものだったと私も思います。
なのでその世代の方々には、感謝と労いの気持ちを禁じえません。

ただし、です。空襲や原爆を経験した人たちを“戦争経験者”、又は“戦争体験者”と呼ぶのは正しくないのですよ。
これは私が言っているのではなく、国際法的にそうなのです。

いいですか? 戦争というのは国の軍隊と軍隊が戦うものを指す言葉です。(民間人を殺傷する行為はテロと呼ばれていますね)
そして良いか悪いかは置いておいて、国際法によってどの国にも戦争をする権利があります。
これは今でもありますし、昔もありました。

そして同じく第二次大戦当時から、国際法が禁止していることがたくさんあります。
例えば”捕虜を殺したり虐待してはならない”などが、国際法によって禁止されている有名な項目です。

そして国際法が禁止している項目の中でも最大級に重要なものが、

“軍隊が非戦闘員を殺傷してはならない”

なのです。
もちろんこれは、第二次大戦当時の国際法もそうだったのですよ。

感情的な話は置いておいて、戦時に兵隊が敵の兵隊を殺すことは正しいのですが、民間人を殺すことは禁止です。
そのため兵隊は皆、自分の国の軍服を着なければならないのです。軍服を着ているということは、敵に殺される可能性がありますし、逆に軍服を着ている敵国民は殺してもいいのです。
なので民間人と間違えないようにするために兵士には軍服を着る義務があるわけですからね。

なので、太平洋戦争の戦争経験者と言うならば、日本兵としてアメリカ・イギリス軍と戦った人達のことのみを指します。
そして彼らが「戦争は悲惨だった」と言えば、それはその言葉通りに正しいでしょう。

しかしながら、東京大空襲や原爆を体験した人たちや被害者たちは、上記定義より戦争経験者ではありません。
よって「戦争は悲惨だった」という言葉も正確には間違っています。

アメリカ軍から空襲や核攻撃を受けた一般の国民が言う「戦争は悲惨だった」という言葉は、論理的に正しい文章で書けば以下の様になります。

「アメリカ軍による、国際法を無視した民間人の大量虐殺は悲惨だった」

です。
なぜならこれらは国際法が定める戦争行為ではなく、戦時に行われた単なる虐殺です。原爆は言うに及ばず、市街地の空襲だってそうなのですよ。

日本の事象を考えるとつい主観的になりがちなので、同じく第二次大戦中に行われたヨーロッパでの事象を考えてみましょうか。
例えば、ナチスに迫害されたユダヤ人たちが「いやあ、戦争は悲惨だった」と言いますか?
言いませんよね。間違いなく「ナチスによる虐殺が悲惨だった」と言うはずです。

なのに多くの日本人は、あたかも戦争になると民間人が住む市街地が空襲されることが当たり前のことだと思っていませんか?
その事が悲惨だというのなら、それは一般的な戦争の話ではありません。
ですが多くの日本人の中の戦争のイメージは、その特殊な戦時のイメージなのです。

余談ですが、実際に兵隊として戦った人ほど、戦争についてあまり語ろうとしません。それがなぜなのかは平和な現代を生きる我々には理解できないことですが、これは世界共通の現象のようですよ。
きっと彼らの心の中には我々には想像の及ばない何かがあるのでしょう、としか私にも推測できません。
何れにせよ、我々は本当の戦争経験者のお話は殆ど聞いたことがないのです。


歴史や政治的なことについても偏見や思い込みを捨てて、純粋な論理的思考をするのが科学のスタンスです。
そしてそれこそが唯一、自分の力だけで洗脳から解かれる方法なのですよ。

まあ、この話はこの辺にしておきましょう。


※ 最後に余談です。

戦後すぐにGHQ(アメリカ)はプレスコードというものを設定し、日本のマスコミが上記のようなことを言ったり書いたりすることを一切禁じました。
ですが当時、朝日新聞が原爆について上記のようなことを書いてしまい、GHQから長期間、発刊停止処分を受けています。
おかげで朝日新聞社はあやうく潰れかけました。そしてGHQにより発刊停止が解除された後から新聞の論調が大きく変わって今に至るとされています。
もちんろんプレスコードなんてものはとっくの昔に廃止されていますが、未だにテレビ局と新聞社はそれを意識しているように見えます。
きっと裏になにか事情があるのでしょうね。



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