人類の誕生は偶然なのか必然なのか?


我々の世界では人類が存在することが当たり前ですが、そもそもの大前提として、この宇宙に”人類が誕生する確率”を考えてみたことはありますか?
きっと殆どの人は無いことでしょう。

この宇宙は物理法則に則って誕生し、そして動いています。今も昔も、です。
そしてこの宇宙には多くの物理的なパラメーターが存在しています。

例えば光の速さや重力の強さ、電子の質量、電子の電荷、宇宙の膨張速度
難しいので省略しますが、その他にも無数の物理定数が存在しています。

そしてそれらの値が僅かでも現在のものと異なっていれば、人類が存在できるような宇宙は誕生していません。
例えば重力定数が今よりも少しでも小さければ、太陽や惑星などの星を形成することができず、宇宙は霧の様にぼやけた気体だけになっていたでしょう。
逆に重力定数が今よりも少しでも大きければ、星々はたちまち寿命を終えて全てがブラックホールだけの宇宙になっていたことでしょう。
いずれにせよこれらは、人間どころか生命が誕生できるような宇宙ではありません。生物に必要な炭素原子などが星の中で核融合により生まれ、その後に超新星爆発によって宇宙空間に拡散することもなかったはずです。(ちなみに宇宙には始めは水素原子しかありませんでした)

重力定数一つとってみてもこれです。その他にも物理定数は無数にあるのです。
参考:物理定数表

物理定数だけではありません。宇宙の密度や初期のエネルギー、大きさや質量など、その他にもパラメーターはいくらでも思いつきます。
これらの値が少しでも、それこそ0.001%でも違っていれば、人間が存在できない宇宙になっていたことでしょう。
この絶妙なパラメーターの調整のことを、

“ファインチューニング”

と言います。
これらのチューニングが偶然に起きる可能性は、文字通り限りなく0に近くなりますね。
因みに有神論者の人たちは「これこそが神が宇宙を作った証拠だ」と考える事が多いようですね。こんなに低い確率の出来事は偶然には起こりえないと。
さて、あなたはどう思いますか?

逆にこの不思議なファインチューニングについて、物理学の説明も書いておきましょう。
比較的最近の物理学では、宇宙は我々が住むものだけでなく、多く存在しているとしています。
その数は10500(1の後に0が500個)などとも計算されており、つまりファインチューニングされていない、人類が誕生できない宇宙が膨大にあるとしています。
これならば確率的に考えても我々の宇宙が偶然の産物としてファインチューニングされていても不思議ではない、ということですね。

少し難しいので、これを噛み砕いた説明にしましょうか。

もしもあなたが宝くじを一枚だけ買って、それが大当たりしたらどう思いますか?
仮に宝くじの一等が当たる確率を百万分の一とすると、こう思いませんか?
「こんなに低い確率の出来事が偶然に起きるはずがない。これには裏に何か、特別な力が働いているに違いない」と。
ですが他に99万9999人の外れた人がいることを知れば何も不思議ではなく、これが偶然の産物であると納得することでしょう。
宝くじは必ず誰かが当たり、その人はきっと上記と同じ「なぜ低い確率の出来事が起きたのか?」という疑問を持つはずですから。

つまり宝くじが誰かに当たる確率は100%であり、当たった人は誰であっても自分の身に起きたとても低い確率の出来事を不思議に思うものなのです。
そして今回の例で宝くじに当たった幸運な人が、上記で言うところの“この宇宙に住む我々人類”に対応する。
よってファインチューニングには特別な力が働いている必要は無い。

これが物理学の説明です。
まあこれは人間原理を使った説明に近いでしょうね。人間原理についてはとても難解なため、また改めて触れることにしましょう。

さて、あなたは人類の誕生は偶然だったと思いますか? それとも必然だったと思いますか?
同様に考えて、あなたの誕生についてはどうでしょう?

 
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