あなたは、なぜ“そのあなた”なのか?
さて、少し挑戦的なタイトルになってしまいましたが、”他人と心が入れ替わる話”や転生ものの漫画やアニメが流行っているということは、誰しもそんなことを考えたことがあるのではないでしょうか?
今回はあなたが“そのあなた”になる確率について少し考えてみましょう。
もし、転生ものの漫画のようにあなたの魂(心)が全ての人の体に宿る可能性があると考えるなら、今の“そのあなた”に宿る確率はどれくらいだと思いますか?
現時点だけでも地球上には人類が70億人ほど居ますね。つまり現時点の人類だけでも“そのあなた”になる確率は1/70億だと言えるでしょう。
これに過去に生まれた全ての人類をプラスして計算すると、まあ凄い数になりそうですね。更にそこに未来の人類や他の生物まで考えると、宿る可能性のある肉体はそれこそ天文学的な数字になることでしょう。
ではなぜあなたは、そんなゼロに近いような確率である、”あなたの体”になったのでしょうか?
そんなに低い確率の出来事が起こるのは不自然でしょうか?
因みにですが、これらの問いに対しては従来より宗教が答えていることが多いですね。
例えばヒンドゥー教やその先祖であるバラモン教などが有名ですが、仏教の一部に於いても輪廻転生の様な教えを説いている宗教がありますね。
これらの宗教では、“そのあなた”になったのは、“前世での行い”によって決まったから。
といった説明が多いでしょう。
要するに前世で(宗教の教えによるところの)悪いことをすると不幸な人に生まれ変わり、良い行いをすると幸福な人に生まれ変わるといった感じです。
“不幸な人”や“幸福な人”の定義を正確に言うならば、例えばバラモン教の教えでは生まれる人の身分でした。
当時は世襲制だったので幸福とは僧侶や王族などの子として生まれることであり、不幸とは奴隷の様な低い身分の元に生まれることといった具合です。
まあこの思想がインドのカースト制の元になっているのですが、カースト制の考え方は慣習として今でも少し残っているらしいですね。(余談ですが”スクールカースト”という言葉はこのカーストから来ていますが、恐らく前世の行いは関係ないでしょう(笑))
さて、では宗教ではなく科学ではこれをどう説明できるでしょうか?
ファインチューニングの話に書いたように、これは宝くじに当たる確率の話に似ているかもしれません。つまりあなたになる確率は低くとも、必ず誰かにはなる。そして誰になったとしてもきっと「どうしてこの自分になったのか?」という疑問を持つだろうと。
でもそう言ってしまうと身も蓋もないので(笑)、今回は一つの例を出して確率の観点から考えてみましょう。
ここで一つのストップウォッチを用意します。このストップウォッチは1/100秒までの精度で測ることが出来るとします。
あなたはこのストップウォッチを目をつぶって10秒以内の任意のタイミングで、ボタンを押して止める実験をするとしましょう。
つまりストップウォッチには10秒以内の何らかのタイムが出るはずです。
では実験スタートです。
もし一回目に7.77秒という結果が出たら少し驚きますよね? だってラッキーセブンが3つ揃っていますから。これがパチンコだったらフィーバーです(笑)。
この実験でストップウォッチに出る可能性があるタイムは0.01秒から10.00秒までなので、7が3つ揃う確率は1/1000ですね。
これはなかなか低い確率の出来事が起きました。ならばこれは奇跡でしょうか? 或いは何か特別な力が働いたのでしょうか?
ではもう一度同じ実験をしてみましょう。今度は5.42秒でした。うむ、、、今度はランダムな数字の並びでしたね。よってとても月並みな結果と言えるでしょう。
月並みとは“良くある結果”や“普通の結果”とも言い換えられるでしょうか。
では同じくこの実験で5.42秒が出る確率はいくつになるでしょか? ええ、当然ながら7.77秒が出る確率と全く同じ1/1000です。
更に同じ実験をしてみたら、今度は8.19秒でした。これまたランダムで意味の無い数字の並びに見えますが、この結果になる確率もまた1/1000なのです。
実際にもう一度同じ実験をしてみても8.19秒になることはまず無いはずです。
我々人間は勝手な主観で、5.42秒も8.19秒も同じ「ランダムな数字の並びだ」として一括りに捉えてしまいます。
なのでランダムに見える数字が出る確率は高くなるわけです。しかしながら実際に一つ一つが起きる確率はすべからく奇跡に見えるほどに低いものなのですよ。
もう言いたいことが分かりましたね? もしあなたが”ごく普通”とされる人であっても、あなたは5.42秒の人なのですよ。
つまりあなたが“そのあなた”になった確率も、あなたが憧れる”とんでもない才能を持った誰か”になった確率も全く同じなのです。
更に付け加えるならこれは、逆にあなたが同情する”重い障害を持った誰か”として生まれた確率とも全く同じです。
つまり確率的に言えば、一括りに“普通の人”とされていても“あなたそのもの”に生まれることは極めて低い確率の出来事であり、普通と呼ばれる誰もが“唯一無二の普通の人”ということになります。
科学である数学が「極めて低い確率」と述べているそれを「普通」と考えるかどうかは、あくまで人間の主観と言うことです。
結局、現実というのはすべからく極めて小さい確率の集まりで出来ていることになりますね。
逆に言えばどんなに小さな確率の出来事であっても、起きるときは起きることになります。
実際にあなたが“そのあなた”としてこの世に生まれたのも、その小さな確率の一つです。
そして科学はこれ以上のことを言うことは出来ません。それ以上のことを言うためには、別の考え方を導入する必要があるでしょう。
……と書きましたが、たまにはもったいぶらずに、先に疑問に対する(私の考える)最終的な答えだけ書いてみましょうか。
詳しい説明はまた改めてしましょう。
あなたは、なぜ“そのあなた”なのか?
それは、“役”です。
今回の疑問は何だかバカっぽいと思ったかもしれませんが、これは意外と重要な考え方であり、ファイチューニングや人間原理を理解するために役に立つでしょう。
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