既得権益とは何なのか?
政治系や社会系の記事も継続して欲しいというご要望が結構あったので、こちらもボチボチ書いていきますね。
内容的に急ぐものから順に書いていくつもりです。
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少し前に東京都立大学教授である、宮台真司さんが大学内で暴漢に襲われる事件がありましたね。
一応、犯人も見つかったようです。
宮台真司さんと言えばYouTube等でも色々な発言をしていますが、いつも言っている事が
「日本はもう終わっている」だとか「日本は沈没する船の中で座席争いをしている状態だ」といった日本についてかなり悲観的な内容が多いでしょう。
そして同時に日本が終わる理由はただ一つ、「既得権益を打破できなかった事」だけだといつも言っていました。
長いバージョンが見つからなかったので、上記は短めの参考動画です。
宮台氏の言う「日本が終わる」とは、恐らく「日本経済が終わる」という意味だと思います。
宮台氏の言説の内容の真偽は取り敢えず置いておくとして、今回はこの“既得権益”とは一体何なのかについて、少し書いてみようと思います。
これだけが原因ではなかったとしても、これが経済が停滞する大きな理由の一つだと私も考えるからです。
既得権益という言葉はテレビなどで良く聞く言葉ですが、実際にそれを身をもって体験した人ってどれくらい居るでしょうか?
いや、もちろん既得権益側で体験している人はたくさん居ると思われますが……。
会社などの組織に属していると意外に既得権益のイメージがぼんやりしている人も多いのではないでしょうか?
まずは以下に、私が実際に体験した話を書いてみましょう。
私は大学を卒業すると同時に事業を開始しました。まあ正確に言うと学生時代からずっと商売をやってはいたのですが、個人事業主としてそれに専任するようになったのは卒業後の事でした。
私が行っていた事業はパソコン用のソフトウェアを作って売る事でした。ソフトのジャンルは数学系であり、これは学校教育にも使える物でした。
実際に私が在学中にも多くの大学や高校に導入されていましたが、当時は時代的にパソコンが学校に導入されてはいたものの、まだ本格的なパソコンを使った授業は行われていませんでした。
教員達もパソコンを使った教育についてはまだ手探り状態だったのです。
そこで私は数が多い公立中学にこのソフトウェアを教材として販売しようと考え、資料を作り、ノートパソコンを持って直接中学校に営業に回りました。
意外かもしれませんが、どこの馬の骨かも分からない青二才の私に多くの教員の方たちが会って話を聞いてくれました。そして多くの教員の方がソフトに興味を持ち、導入を検討してくれたのです。
しかしながら教員の方が言うには、ある額以上の教材となると教育委員会の許可が必要となるらしいのです。公立の学校なので、まあそれは妥当なルールでしょう。
ですが実際には現場の先生が欲しいと言っている教材を教育委員会が許可しないケースは殆ど無いそうです。
なのですが……、一つだけ条件があるのですよ。
その条件とは教材の中身や価格ではありません。何と驚く事に、”教育委員会が指定した教材会社を通して買う事”なのです。
逆にその条件さえ守れば実質的に全て予算が下りるのですよ。
現場の先生も私から直接買いたいけどこのルールがあるから、指定の教材会社と契約をしてくれと頼まれました。
ええ、もちろん行きました、その教材会社に。そして社長と会って契約の話をしましたが、驚く事にその会社は何もしないで売り上げの40%を取るというのですよ。
40%!! 私はこの数字に驚きました。
ソフトウェアの開発にはべらぼうに時間もお金も労力も掛かっています。学校に営業に回るのにも多くの時間も手間も原付バイクのガス代も掛かっています。ついでに言えば、営業用に買ったノートパソコンも当時は高価でした。
その全てを行って私が自分一人で稼いだお金を、何もしないで4割も取って行くってどういうことか?と思いました。
ほんの昨日まで学生だった世間知らずの私は、バカ正直に思った事を社長に言ってしまいました。
「4割はいくら何でも取り過ぎではないか? 逆に聞くがこの4割は何の代金なのか?」
と。
「例えば私の代わりに他の学校に営業をしてくれるのか?」と尋ねたら、「そういうことはやっていない」と言われました。
「では最低でも、納品時に学校のパソコンにソフトをインストールしてもらえるか」と尋ねたら、それもやらないと言われました。(なので学校から納品の連絡を待って、私がサービスとして改めてインストールをしに行きました)
「じゃあ逆に御社は何をやるんだ?」と私が尋ねたところ社長は、「伝票を切ります」と言ったのです。(ガチです)
いやいや……。それじゃあ単なるドロボーやんけ……。
もう一度言いますが、まだ私は先日まで学生だった世間知らずの若者でした。
だから正直に「伝票を切るだけで4割も取るのは酷すぎる。もっと負けて下さい」と言いました。
すると社長は「だったらもう、うちを通さなくて結構です」と言ったのですよ。
「いや、それが出来るなら私も現場の先生もそうしたいって!」と喉元まで出かけましたが、さすがの私もそれは言いませんでした。
この会社を通さないと教育委員会が予算を出さない事を知っているから、社長はこっちの弱みにつけ込んでそう言ったのですよ。
困った表情になった私を見て社長は言いました。そう、世間知らずの若者を諭すような表情とため息交じりの言葉遣いで。
「君ねー、わかってないんだよ。始めからうちが取る4割分を上乗せした価格設定にして売るんだよ」
なるほど……、確かに……。始めから多めに取れば良い……、確かにその通りです。
でも価格の安さも私のソフトの売りだったので、4割の値上げはかなり厳しいものでした。
ですがそれ以前にこれは公立学校の話ですから、私が売った教材代の元は当然ながら税金です。皆さんが一生懸命働いて稼いで払っている税金はこの様に使われているのですよ。
私は何度もこの教材会社に行きましたが、10人弱居た社員たちはいつも何もやっていませんでした。業務は文字通り”教材を通すだけ”なのです。
何かを作る事もなければ、何かサービスする事もなく、ただそこに座って居るだけでお金が入ってくるのです。それも当時の私の何倍も……。
なぜか? それはこの会社が教育委員会とくっ付いているからです。
これが私がはじめて身をもって経験した既得権益でした。
日本の学校教育を監視する役目の教育委員会ですら、このざまなのですよ。
良く「どこの世界もドアを一枚開けると既得権益で埋まっている」などと言いますが、きっとその通りなのでしょう。
こんな非生産的な人たちがたくさん社会に寄生していれば、それは経済も停滞するというものです。しかも彼らが取っているのは税金ですから、彼らがやっている事は生活保護の不正受給よりもたちが悪く見えます。(取っている額が遙かに多いので)
つまりこれは国から認められている”税金の横領”なのですよ。
例えが悪いかもしれませんが、“みかじめ料”を取るヤクザだって店のトラブルを解決してくれるなど何らかの仕事をするし、そもそも売り上げの4割も持って行く事はないでしょう。(売り上げの4割も取ったらお店は赤字で潰れます)
それを天下の教育委員会がやっているのですよ。
また後で調べて分かった事ですが、この教材会社が管轄するのは一つの市町村だけで、どこの市町村に行っても全く同様の教材会社があるそうです。どうやら日本の社会はそうやって動いているようです。
これではまるで社会主義、いやこの会社の社員は実際に製品を作って売っている私の何倍も給料を貰っているのですから、下手をしたら社会主義以下にすら見えます。
少し余談ですが、私はこの時期に良く異業種交流会に出席していたのですが、そこでたまたま、そうですねえ……、ある役人と言っておきましょうか、役人の方を紹介して頂きました。
そしてその方に「全国の学校に私の作った教材ソフトを導入するのが最終的な目標なのだが、どうしたら良いのか?」と尋ねてみたのですよ。
因みに現時点で学校に営業に回っている事も説明しました。するとその方は「そのやり方では100年経っても全国に導入される事はない」と言っていました。つまり、そもそもビジネスのやり方が間違っていたようです。
ではどうしたら良いのか?と尋ねた私にその方はこう言いました。
「政治家のパーティーに出席しなさい。何度も何度も出席して、まずは政治家に顔を覚えて貰うのです。そして頃合いを見て政治家にソフトの売り込みを頼むんですよ」
どうやらこの方は親切心で本当の事を教えてくれたようです。ええ、気休めではなく。
この時に私は、社会がどのような仕組みで動いているのかを知りました。良いものを作ったり熱意があれば成功すると思っていた若い私は少なからずショックを受けましたが……。
先述の教材会社だって既得権益を得るためにきっと上記に近い事をしたのでしょうね。
話を戻しますが、これでは宮台氏が言っている事に納得する人が居るのも頷けますね。
でもこの事実を知っても、誰もそれを変えようとはしないのですよ。
実際に既得権益を変えたいと思うのは当時の私のような弱者であり、政治的に大きな力を持っているのは既得権益側の人たちなのですから、現状の選挙制度に基づく民主主義で変える事は原理的に不可能に思えますね。正にジレンマです。
以前に「民主主義の定義を改めるべきだ」的な事を書きましたが、この様な背景も私の考えに影響を与えているのだと思います。
これは私の純粋な勘ですが、もしこれらを変える人や勢力が出てくるとしたら、それはきっと外国のものだと思います。
つまり資金や政治的な力を持ち、且つ日本の既得権益に絡んでいない存在です。
この件に限らず私の経験上、日本に於いて能力と所得は全く比例しません。
既得権益側に入ることが出来れば言い方は悪いですが、どんなにバカでも無能でも、上記の教材会社の様にただ座っているだけでも、一定額以上の所得を半永久的に得る事が出来るのですよ。
因みに宮台氏はその解決方法として、加速主義という話をしています。
これはさすがに誰もが「ダメだこれは」と思うほどに日本が凋落してはじめて、皆が何とかしないといけないと気づくと。
つまり出来るだけ早く日本を潰す事で、皆を早く目を覚めさせるという事ですね。
ただこれについては私は意見が異なります。
私は今ならば、まだギリギリ間に合うと考えているからです。ええ、まだ日本は沈没を免れる可能性があると。
ただしあまり時間が有りません。間に合わせるためには責任のある今の大人世代の人たちが変わるしかありません。
もし今の若者が社会の主軸になる時代まで待ったならば、その時には既に手遅れでしょう。
そして解決法は今までに書いてきたとおり単純にして明快です。日本が今すぐやるべき事は分かっているのですから、皆でそれに取り組めば良いだけなのです。
私はいつも日本の事を“自殺する国家”と言っています。
外国から侵略を受けているわけでもなく、愚かな独裁者がいるわけでもなく、国民の能力が低いわけでもなく、大災害が起きたわけでもなく、民族紛争やクーデターが起きたわけでもないのに、勝手に自ら凋落していく国なのですよ。
そしてこの既得権益の件の様に、問題点や凋落を避ける方法を誰もが知っているのに、誰もそれをやろうとはしないのです。
確信的に皆で国を沈没させる。つまり、自殺です。
少子化を進め、愚民化を進め、国内に貧困者が増えているのに外国に富を配り、勝手に衰退していくのです。
これら全ての原因は日本人のマインド、つまり意識から来るものです。
そして意識というのは洗脳によって他人が容易に操作することが可能なのです。
まあ、この話はこの辺にしておきましょう。
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