“鬼滅の刃”の本当のテーマとは


成人した皆さん、おめでとうございます。
さて、たまには私の社会観察&社会分析について書いてみましょうか。
 
”鬼滅の刃”がなぜヒットしたのかは“鬼滅の刃”はなぜヒットしたのか?に書いたとおりですが、鬼滅の刃は単なる格闘漫画ではなく、ここまでの大ヒットの裏側には他の理由があると私は考えています。
ここで私から皆さんにお聞きしますが、“鬼滅の刃”のメインテーマは何だと思いますか?
 
私は、

“家族愛”

であると考えています。
主人公の炭治郎自身が妹との絆について頻繁に語っていますが、敵である鬼の側にも人間時代の家族の絆について描かれている物が多いですね。
 
因みに昔の少年漫画では家族愛や家族の絆をメインテーマにしている物は極めて少なかったと思います。
格闘漫画自体は“北斗の拳”、“ドラゴンボール”など昔から多くありましたが、あまり家族がどうだという話は無かったですかね。
つまり現代は家族愛をテーマにした作品が一般受けするということなのでしょう。
 
因みに昔の子ども達は大人から「親を大切にしなさい」と良く言われたものですが、最近の子ども達は親を大切にするのは当たり前なので、言う必要が無いらしいですね。
なので子どもたちにも親世代にも“鬼滅の刃”の様な”家族愛”や”家族の絆”をテーマにしたものが心に響くのだと考えています。
実際に親が子どもを連れて“鬼滅の刃”の映画を見に行って、親の方が泣いたという話をよく聞きましたよね。これは子どもを連れて“ドラえもん”の映画を見に行っていた昭和~平成初期の時代には有り得ないことでした(笑)。

漫画自体が殺したり殺されたりという血みどろで残酷な物であるにもかかわらず、親世代が子どもにそれを見せることに抵抗がないのは、やはり家族愛をメインテーマにしているからなのでしょう。
 
さて、分析は以上で、ここから先は私の個人的な意見です。
昔の漫画で描く人と人との愛情と言えば、恋愛や友情をテーマにした作品が多かったと思います。これは少年漫画に限らずそうだったでしょう。特に少女漫画ではほぼ必ずと言って良いほど恋愛のシーンが出てきたのではないでしょうか?
昔の子どもや青少年達はそんな漫画から恋愛や友情などの、他人との絆の作り方を学んでいたのだと思います。

もともと、”家族の絆”や”血の繋がり”というのは何の努力をしなくても存在する最も強い絆です。これは日本に限った話ではありませんし、現代に限った話でもありません。人類の歴史を見れば分かるとおり、人というのはすべからく遺伝子レベルで血の繋がりを重視するのですよ。
実際に親目線で言うならば、他人の子どもよりも自分の子どもの方が可愛いですよね?
或いは子ども目線で言うならば、いくら親友であっても愛する恋人であっても、例えば高額な大学の学費なんて他人は出してくれませんよね? 親兄弟だから見返りを求めずに出してくれるのです。
 
“身内と他人”という区分があるように、血の繋がりというのは何の努力もせずとも本能によって最強の絆を与えてくれます。
しかしながら他人と強い絆を作るためにはそれなりの努力が必要です。友人だって恋人だって何もしなくて出来る物ではありません。
師弟間の絆や医師と患者の絆、仕事相手との絆など、その他の絆であっても同様でしょう。更に言うならもともと夫婦だって血の繋がりはありません。
これらの絆は何の努力もしなくても親が愛情を注いでくれるように勝手に得られる物ではありません。だから今までに多くの文学や映画や漫画でこれらの他人と絆を作るシーンが描かれてきたのです。
 
もし現代の作品がそれらを回避して、もともと最も強い絆である家族の絆ばかりを描いていたら、子ども達は困難である他人との絆を作れなくなってしまうのではないでしょうか? つまりそれは、人と人とのコミュニケーション能力の劣化となります。
結果、家族以外の人と絆を作れない人生なんて私は寂しいと思います。
 
”鬼滅の刃”のヒットを知り、アニメ、原作ともに全ての作品を見た私の脳裏には、そんな一抹の不安が横切ったのでした。
 
そしてクリエイター達には楽に大衆を感動させられる方に逃げずに、困難なことにチャレンジし続けて欲しいと考えています。
特に現代に於いては漫画が子どもに与える影響は極めて大きいのですから。


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